「姿勢は気をつけているのに肩が重い」
「マッサージしてもすぐ戻る」
そんな肩こりの背景に、**心理的ストレス(精神的な緊張)**が原因の一つになっている可能性があります。
近年の研究では、肩こりや首の痛みと心理的ストレスとの関連が報告されています。
心理的ストレスで肩こりは起こるのか?
原因やメカニズムを知りたい方に向けて、論文報告をもとに整理します
結論
心理的ストレスは、それ単独で肩こりを引き起こすと断定できるものではありませんが、肩こりを悪化・慢性化させる要因の一つとして関わっている可能性が、複数の研究で示されています。肩こりは筋肉の問題だけでなく、ストレス、姿勢、生活習慣が絡み合う多因子性の症状と理解するのが妥当です。
この記事はこんな人におすすめ
- ストレスが強くなると肩こりも強くなる気がして、その仕組みを知りたい人
- 姿勢は悪くないはずなのに、肩こりを感じる人
まず知っておきたい安全上の注意
ストレスによる筋緊張が疑われる場合でも、次のような症状がある場合は心理的要因だけで片付けず、医療機関に相談してください。
- しびれ、脱力を伴う
- 強い頭痛、吐き気を伴う
- ストレスケアやセルフケアを続けても改善しない、悪化している
エビデンスの要約
心理的ストレスと肩こり・頸肩部痛の関連については、日本国内外で複数の研究報告があります。
- 日本人の「肩こり」を欧米の”neck pain”と比較した研究では、有訴率・性差・年齢構成・病態生理に大きな差は見られなかった一方、心理社会的ストレスとの関連がより強いという特徴が報告されています。著者らは、日本文化において「肩」という言葉が精神的負担の表現としても使われるため、心理社会的ストレスが身体化し「肩こり」として訴えられやすいと考察しています。
- 医療秘書を対象にした研究では、不利な心理社会的労働条件(仕事の要求度の高さなど)が知覚ストレスを高め、それが筋肉の緊張感の高まりや頸肩部症状のリスク増加と関連することが示されています。
- 心理社会的ストレスと性格特性が、頸部・肩の筋肉への生体力学的な負荷に影響を与えることを検討した研究もあります。
- メディア企業職員を対象にした12か月間の追跡研究では、ストレスに関連する生体指標(バイオマーカー)と、頸部・肩・背部の痛みとの関連が調べられており、回復・同化に関わる指標が高い人ほど痛みが少ない傾向が報告されています。
これらの研究は、いずれも「ストレスが筋緊張や痛みに関連する経路がありうる」ことを示すものであり、「ストレスだけで肩こりが起きる」と単純に結論づけるものではない点に注意が必要です。
なぜそう言えるのか
ストレスを感じているとき、身体には次のような反応が起こるとされています。
- 交感神経が優位になる
- 呼吸が浅くなる
- 首・肩の筋活動が高まる
- 無意識に肩へ力が入り、緊張が蓄積する
この状態が続くと、「ストレス → 筋緊張の持続 → 血流低下 → 疲労感・こり感」という悪循環が生まれると考えられます。
また、ストレス心理学の代表的な理論であるLazarus & Folkmanの「認知的評価理論」では、出来事そのものよりも「それをどう評価するか」がストレス反応の強さを左右するとされています。同じ量の仕事でも、それをどう捉えるかによって身体の緊張度合いが変わりうる、という考え方です。
セルフケア
ストレスに由来する筋緊張へのアプローチとしては、次の3層で考えるのが実践的です。
- 思考の整理:ストレスの原因や「どう捉えているか」を書き出して客観視する
- 呼吸の調整:ゆっくりした深呼吸は、副交感神経を高め、過剰な緊張状態を和らげる助けになります。
- 身体のリラクゼーション:心理的ストレスをすぐに解決することは難しくても、身体の緊張を緩めることでリラクゼーション反応を促すことは可能です。
- 例えば、体を支えて脱力しやすい姿勢をとる、首・肩を温める、軽いマッサージ、これらはストレスの根本治療ではありませんが、筋緊張を一時的に低下させる、呼吸を深くしやすくする、悪循環を断ち切るきっかけを作るという意味で補助的役割を持ちます。
- 体の形に合わせて変形するビーズクッションなどは、接触面積が広がりやすく、局所的な圧を分散しやすい構造です。圧分散により身体的な快適感が高まることは、間接的にリラクゼーション反応を促す可能性があります。ビーズクッションについてはこちらで詳細は書いています。
これらは「ストレスの根本治療」ではなく、あくまで筋緊張の悪循環を断ち切るための工夫という位置づけです。
(セルフケアについては「作業療法士が実践!肩こりが楽になったセルフケア7選」を参照してみてください)
やってはいけないこと
- 「ストレスのせい」と決めつけて、姿勢や生活習慣などはあまり考えない
- ストレスケアだけに頼り、しびれなど別の原因が疑われる症状を放置する
- 症状が強いにもかかわらず、セルフケアだけで長期間様子を見続ける
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、整形外科や心療内科など適切な医療機関の受診を検討してください。
- セルフケア・ストレスケアを数週間続けても改善しない、または悪化している
- しびれ、脱力、強い頭痛、吐き気を伴う
- ストレスそのものが強く、日常生活に大きな支障が出ている
まとめ
✔ 心理的ストレスと肩こりには関連が示唆されている
✔ ストレスは首・肩の筋活動を高める可能性がある
✔ 肩こりは多因子性の症状
✔ 心理的要因も含めた包括的視点が重要
肩こりが続くときは、「筋肉だけ」の問題と決めつけず、心の緊張にも目を向けることが一つのヒントになります。
🧠 作業療法士としての視点
肩こりを「単なる筋肉のコリ」としてだけ捉えると、マッサージの繰り返しで行き詰まってしまいがちです。
「生活全体」や「心の緊張」を含めた包括的なケアをおすすめします。
たとえば「ちょっと頭を整理する時間を作る」「深く息を吐いてみる」「クッションで体を預けてみる」「合間にストレッチなど運動をしてみる」
そんな、日常の小さな『緩める工夫』をいくつか持っておくことが肩こりの対策になるかもしれません。
参考文献
- 沓脱正計, 黒岩誠. 日本人が訴える肩こりの特徴について(Characteristics of Katakori as physical complaints among Japanese people). こころの健康. 2010;25(2):61-66. 日本精神衛生学会. DOI: 10.11383/kokoronokenkou.25.2_61
- Larsman P, Kadefors R, Sandsjö L. Psychosocial work conditions, perceived stress, perceived muscular tension, and neck/shoulder symptoms among medical secretaries. Int Arch Occup Environ Health. 2013;86(1):57-63. DOI: 10.1007/s00420-012-0744-x
- Nimbarte AD, Al Hassan MJ, Guffey SE, Myers WR. Influence of psychosocial stress and personality type on the biomechanical loading of neck and shoulder muscles. Int J Ind Ergon. 2012.
- Schell E, Theorell T, Hasson D, Arnetz B, Saraste H. Stress biomarkers’ associations to pain in the neck, shoulder and back in healthy media workers: 12-month prospective follow-up. Eur Spine J. 2008;17(3):393-405. DOI: 10.1007/s00586-007-0554-0. PMCID: PMC2270377
参考情報(業界解説記事)
- 株式会社バックテック. コロナ禍で肩こりと首の痛みが急増?―デスクワーク環境と心理的ストレス―. PT-OT-ST.net.


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