寝不足の朝に限って、肩や首がやけに重い。前日と同じように仕事をしているはずなのに、なぜかつらい——そんな経験がある方は多いのではないでしょうか。
「気のせいかな」と思ってしまいがちですが、実は研究によって、睡眠と痛みの感じ方には、関係があることが示されています。
結論
睡眠不足が肩こりを直接引き起こすとまでは言い切れません。ただ、痛みを感じやすくする方向に働く可能性は、複数の研究で示されています。
つまり、「寝不足のときほど、同じ肩の状態でも、こりや痛みを強く感じやすくなる」という関係は十分にありえます。「寝不足の日は肩がつらい」ーーそう感じているなら、それは気のせいではなく寝不足のせいかもしれません。
肩こりだと肩まわりのセルフケアだけに目が行きがちですが、睡眠そのものを整えることも大切です。
この記事はこんな人におすすめ
- 睡眠不足の日に肩こりがひどく感じる方
- 睡眠と肩こりの関係が知りたい
安全のために知っておいていただきたいこと
しびれ・強い痛みを伴う場合は、この記事を読み進める前に医療機関への相談を検討してください
エビデンスの要約(研究でわかっていること)
健康な人と慢性的な痛みを抱える人を対象にした、31件の研究をまとめた大規模な分析があります。この分析では、まったく眠れない状態(総睡眠遮断)が続くと、痛みへの耐性がはっきり下がることが示されました。
さらに、完全に眠れないわけではなく、睡眠時間が部分的に足りない程度でも、感じる痛みの強さが増していたと報告されています。
また、途中で何度も目が覚めてしまうような「眠りが浅い」状態も、痛みへの敏感さを高める方向に関連していました。
つまり、「眠れていない度合い」が大きいほど、痛みを強く感じやすくなるというシンプルな関係です。
日本の病院職員を対象にした研究でも、興味深い報告があります。
肩こりが重症化する要因として、長時間のパソコン作業、女性であること、そして睡眠の質が低いことが挙げられており、症状が重い人ほど、僧帽筋(肩の筋肉)が実際に硬くなっていたことも確認されています。つまり、睡眠の質の低さは、単に「つらく感じる」だけでなく、筋肉の状態そのものにも関係している可能性があるということです。
作業療法士の視点
肩がこると、どうしても肩まわりのセルフケアばかりに目が行きがちですよね。ですが、寝不足のときは体全体が重く感じやすく、一生懸命マッサージやストレッチをしても、思ったほどスッキリしないという声を耳にします。
臨床でも、「肩がつらいから何とかしなきゃ」と夜遅くまで自己流のケアを頑張り、その結果、睡眠時間を削ってしまっているケースを見かけることがあります。忙しいときほどケアに時間をかけたくなりますが、睡眠を削ってしまっては本末転倒です。十分な睡眠がとれないままでは、かえって肩こりが改善しにくくなる可能性があります。
また、「休日にゆっくり眠った翌日は、肩が少し楽になった」と話される方も少なくありません。このような場合は、睡眠不足が解消されたことで、痛みやこりの感じ方が和らいだ可能性が考えられます。
一方で、「しっかり寝たつもりなのに朝から肩が痛い」「寝ようとしても首や肩の力が抜けず、なかなか眠れない」という場合は、睡眠時間だけでなく、枕などの寝具が合っていないことも原因の一つかもしれません。そのような場合は、睡眠環境も一度見直してみることをおすすめします。
肩こりがつらいと、真っ先にマッサージやストレッチを思い浮かべるのは自然なことです。もちろん、それらも大切なセルフケアです。
ただ、その前に一度だけ「昨日はちゃんと眠れたかな?」と振り返ってみてください。
もし睡眠時間が足りなかったり、夜中に何度も目が覚めていたりしたのであれば、まずは睡眠を整えることも立派な肩こり対策です。
忙しいときほど、「今日はもう早く寝よう」と思い切って休むことが、結果的に肩こり改善への近道になることもあります。
睡眠不足の状態が続くとどうなる
睡眠不足の状態が続くと、身体の炎症反応に関わる指標や、ストレスに反応するホルモンのバランスが変化しやすくなることが知られています。こうした変化は、痛みを感じ取る神経系の感度にも影響し、「同じ刺激でも、より痛みやこりとして強く感じやすくなる」状態につながると考えられています。
また、睡眠不足は日中の姿勢を保つ筋肉の働きやすさや、疲労の回復のしやすさにも影響します。結果として、「疲れが取れないまま、また同じ姿勢で一日を過ごす」という悪循環にもつながりやすくなります。
いい睡眠をとるためにできること
就寝・起床の時間をできるだけ一定にする
休日だけ長く寝るよりも、毎日のリズムを整えるほうが睡眠の質は安定しやすくなります。
寝る前のスマートフォンやパソコンの使用時間を減らす
寝る直前までスマホを見ると、画面の光や情報の刺激で眠りにつきにくくなることがあります。
寝室の温度・明るさなど、眠りやすい環境を整える
室温や明るさを見直すだけでも、眠りやすさは変わることがあります。
枕の高さなど、寝具が合っているか見直す
寝ても首や肩がつらい場合は、睡眠時間だけでなく寝具が合っていない可能性もあります。
逆効果になりそうなNG行動
- 睡眠不足の状態を続ける
- 睡眠を削ってでも、肩こりのセルフケアをする(睡眠をとったほうが楽になることもあります)
受診のサイン
次のいずれかに当てはまる場合は、医療機関の受診を検討してください。
- 睡眠を見直しても肩こりが数週間改善しない、悪化している
- 不眠が続き、日常生活に大きな支障が出ている
- しびれ、脱力、強い頭痛を伴う
参考文献
- Chang JR, Fu SN, Li X, Li SX, Wang X, Zhou Z, Pinto SM, Samartzis D, Karppinen J, Wong AY. The differential effects of sleep deprivation on pain perception in individuals with or without chronic pain: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2022.
- Onda A, Onozato K, Kimura M. Clinical features of neck and shoulder pain (Katakori) in Japanese hospital workers. Fukushima J Med Sci. 2022;68(2):79-87. PMID: 35660659


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