朝起きた瞬間から、なんだか首や肩が重い。寝ようと思っても首や肩の力が抜けなくてなかなか眠れない。ふと視線を落とすと、そこにあるのは何年も同じ枕——。「もしかして、これが原因?」そう思ったことがある方は、きっと少なくないはずです。今日は、枕と肩こりの関係を、研究をもとにお伝えします。
結論
枕の高さや形は、首まわりの負担や寝ている間の姿勢に影響することが研究で示されており、肩こりとまったく無関係とは言えません。
ただし、枕を変えただけで肩こりが劇的に改善するわけでもありません。研究では、症状の改善が期待できる可能性は示されていますが、その効果は小〜中程度とされています。
枕は肩こり対策の一つではありますが、それだけですべてが解決するものではありません。日中の姿勢や運動、睡眠習慣などと合わせて考えることが大切です。
この記事はこんな人におすすめ
- 朝起きたときの首・肩のこわばりが気になる
- 肩がこっているのは枕が関係あるのか思ったことがある
- 枕を買い替えるなら、何を基準に考えればいいか知りたい
安全のために知っておいていただきたいこと
しびれ・強い痛みを伴う場合は、この記事を読み進める前に医療機関に相談することを検討してください。
エビデンスの要約(研究でわかっていること)
枕のデザイン(高さ・形・素材)が、首の痛みや起床時の症状、頸部の動かしにくさ、睡眠の質、背骨の並び方に与える影響を調べた大規模な分析があります。35件の研究をもとに、質の高い9件(参加者555名)を詳しく見たところ、ラテックス素材、頭と首の形にフィットする輪郭のある形状、7〜11cm程度の高さ、熱がこもりにくい表面が、睡眠の質の改善や睡眠関連の痛みの軽減に一定の裏付けを持つとされています。ただし効果の大きさは小〜中程度で、「これで劇的に治る」というレベルではないともまとめられています。過度な期待をせず、あくまで「後押しになる要因」としてくらいの感覚とらえるのが現実的です。
枕の高さが、頭や首にかかる圧力、そして首の骨の並び方にどう影響するかを調べた研究もあり、高さによって首への負荷のかかり方が変わることが示されています。実際に枕の高さを調整した前後で、首の痛みや身体症状の変化を追った研究でも、適切な高さへの調整が症状の変化と関連していたと報告されています。
作業療法士の視点
一般的には「高い枕=良い枕」「柔らかい枕=良い枕」というような、単純な良し悪しの図式で語られがちですが、実際には、体格や普段の寝姿勢によって合う枕は変わるため、万人共通の正解はありません。
セルフケアで失敗しやすいのは、枕を変えた直後の1〜2日だけで「合う・合わない」を判断してしまうことです。身体が新しい枕に慣れるまで、多少の時間がかかることも珍しくありません。
この記事で一番伝えたいのは、枕は「単体で治す道具」ではなく「日中のセルフケアを後押しする土台」として捉えてほしいということです。
私自身も講習会で、首の後ろや肩の後ろにできる隙間をタオルで埋めて負担を減らす方法を学び、参考にしてきました。実際に、首や肩の支え方が変わるだけで楽になる方もいます。
具体的な埋め方や、枕選びへの活かし方は肩こり向け枕の選び方で詳しく紹介しています。
なぜ枕が影響するのか?
睡眠中は、日中と違って自分で姿勢を調整する意識的なコントロールが働きにくくなります。そのため、枕の高さや形が合っていないと、その状態が数時間続くことになり、頸椎や周囲の筋肉に偏った負荷がかかり続ける可能性があります。仰向けか横向きかによっても、首を支えるために必要な高さは変わってくるため、「枕が合っているかどうか」は、体格や普段の寝姿勢によっても左右されると考えられます。人は眠っている間に何度も寝返りを打つため、実際にはどちらか一方の姿勢だけでなく、両方にある程度対応できるかどうかも重要です。
(隙間の生まれ方や、姿勢ごとに必要な高さが違う理由については肩こり向け枕の選び方で詳しく解説しています)
ただし、肩こりは枕以外にも、日中の姿勢、ストレス、運動不足など多くの要因が関わる症状です。枕を整えることは、こうした要因の一つに対処する手段であって、それだけで肩こりが根本的に解消するわけではない、という前提で考えるのが現実的です。
今日からできること
- 自分がよく取る寝姿勢に合わせて枕の高さを見直す:仰向けが多いか、横向きが多いかで、必要な高さは変わってきます(具体的な選び方は肩こり向け枕の選び方を参照してください)。
- 起床時の首・肩の状態をメモしておく:枕を変えた前後で比べられるように記録しておくと、効果を客観的に判断しやすくなります。
- 枕だけで完結させない:日中の姿勢やストレッチと合わせて取り組むことで、相乗効果が期待できます。
やってはいけないこと
- 「高い枕を買えば絶対に治る」と信じ込み、日中の姿勢改善やストレッチをやめてしまう
- 明らかに痛みが強まっているのに「そのうち慣れるはず」と使い続ける
- しびれや脱力感があるのに、医療機関を受診せず枕の見直しだけで済ませようとする
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、医療機関の受診を検討してください。
- 枕を見直しても数週間改善しない、悪化している
- しびれ、脱力、強い頭痛を伴う
- 夜間、痛みで目が覚めることが続く
参考文献
- The effects of pillow designs on neck pain, waking symptoms, neck disability, sleep quality and spinal alignment in adults: A systematic review and meta-analysis. Clinical Biomechanics. 2021;85:105353.
- Effect of pillow height on the biomechanics of the head-neck complex: investigation of the cranio-cervical pressure and cervical spine alignment. PMCID: PMC5012320
- Changes in neck pain and somatic symptoms before and after the adjustment of the pillow height. J Phys Ther Sci. 2022;35(2). PMCID: PMC9889209


コメント